【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
(魔植物を嫌う花は、高地にある岩場に咲き鮮やかな黄色い花をしていると言っていたわよね)

 スイレンは、目を凝らして山頂へと続く岩場を見つめた。白い岩場が広がる中に、小さくて見逃しそうだった鮮やかな黄色が目に入った。

(きっと。あれだわ!)

 思っていたよりも早くに目的が達せられそうだと気が急いていたスイレンは岩場を何とか登り切り、手を伸ばして花を採ろうと茎を持った。

 その時。目の前の岩場にある暗い裂け目に気がついた。

 驚き身体のバランスを崩したスイレンは、そのまま裂け目へと吸い込まれるように倒れ込んでしまった。恐怖の悲鳴を上げる前に、意識も闇に飲まれる。

 完全に意識を失ってしまう前に、岩場の下でスイレンを待っているはずのワーウィックが「キュー、キュー!」と、悲しそうな声で鳴いたのを聞いた。


◇◆◇


「……イレン、スイレン」

 まるで燃えているような赤髪が、うっすらと視界に入る。それに、ひどく温かい。まるで贅沢にお湯を使った、お風呂に入っているかのよう。

(あったかくて気持ちよくて……出来るなら、ずっとこのままでいたい)

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