青春×6

少し近づいた距離。

花火大会は中止になって、

やることがなくなった私たちは、

あゆの家に行くことになった。

ゲストルームに、

みんなで集まる。

なんかちょっとだけ特別な感じ。

私は、自然と

加戸の前に座っていた。

向こう側では、

加戸と福田諒平が話している。

笑いながら、

普通に、楽しそうに。

その様子を、

なんとなく見てしまう。

私は、

あゆとみおと話していたけど、

意識は、少しだけそっちに向いていた。

気づけば、

かおると紗英ちゃんは先に帰っていて、

部屋には、少しだけ落ち着いた空気が流れていた。

机の上には、お菓子がたくさん。

ポテチとか、グミとか、

適当に手に取って食べながら、

みんなでだらだら話す。

その時間が、

なんかすごく心地よかった。

でも。

ひとつだけ、

気になることがあった。

——加戸の顔。

いつも、

メガネにマスク。

ちゃんと外したところ、

ちゃんと見たことがない。

今日こそ、見てみたい。

でも、

見てると外してくれない気がして。

だから。

こっそり、スマホを構えた。

動画を回す。

バレないように、

さりげなく。

そのとき。

「おい、恋音」

ビクッとする。

「なんか撮ってるだろ」

顔を上げると、

加戸と目が合った。

「えー撮ってないよ?」

とぼける。

「絶対撮ってるだろ」

少し笑いながら、

こっちに近づいてくる。

「見せろよ」

ぐっと距離が縮まる。

スマホをのぞき込もうとしてくる。

——近い。

思わず、動画を止める。

「ほら、撮ってないって」

画面を見せる。

「……あやしい」

そう言いながらも、

それ以上は追及してこなかった。

少しだけ離れる。

でも。

さっきの距離が、

頭から離れない。

——近かった。

ほんの一瞬だったけど、

すごく近くて。

それだけで、

ちょっと嬉しくなる自分がいた。

気づけば、時間は過ぎていて。

帰るころには、

もう外は暗くなっていた。

「やば、もう九時じゃん」

「時間早すぎ」

そんなこと言いながら、

五人で帰る。

あゆ、みお、私、加戸、福田諒平。

夜の空気が、少し涼しい。

「福田ってさ、下の名前なんだっけ?」

あゆが聞く。

「諒平ー!」

「え、いい名前!!」

「でしょ」

ちょっと誇らしげな声。

その流れで、

ふと思いつく。

「じゃあさ、これから諒さんって呼ばない?」

言ってみる。

「いいね!!」

あゆがすぐに乗る。

「それいいかも」

みおも笑う。

「じゃあ決定な」

諒平——いや、諒さんも笑う。

そんな、何気ないやりとり。

でも、

なんかちょっと嬉しかった。

みんなで同じことを決めて、

同じ呼び方をする。

それだけで、

少しだけ距離が縮まった気がする。

夜道を歩きながら、

ふと横を見る。

加戸は、いつも通りで。

特別なことは何もなくて。

でも、

今日のことを思い出す。

隣に座ったこと。

近づいた距離。

交わした会話。

全部が、

ちゃんと残っている。

——少しずつでいいから。

この距離、

縮まっていけばいいな。

そう思いながら、

私は前を向いた。
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