その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない
「…………え?」
ページを捲った瞬間、怜の思考がフリーズした。
そこにあったのは、昨日までの「お城の絵」ではない。
銀行システムのレガシーな構造を逆手に取った、多層的なAPI連携。トラフィックを分散させるための、極めて高度な非同期処理のシーケンス図。
「なによ……これ。このキャッシュ戦略、課長が考えたんですか?」
「アメリカの大学にいた頃、似たような大規模統合の事例があってね。日本の古い規格に合うように、昨夜調べながらアジャストしてみたんだ。……まだ荒削りだけど、どうかな?」
景は、褒められた子供のように照れくさそうに笑った。
怜は絶句した。自分が指摘しようとした脆弱性が、より洗練されたロジックで、先回りして塞がれている。
(……嘘でしょ。この人、ただの『お飾り』じゃなかったの……!?)
「おーい、課長。このUIのプロトタイプ、最高っすね!」
デザイナーの白河が、モニターからひょいっと顔を覗かせる。
「共通画面案をボツにして、ロール別の動的生成にするなんて……。昨日の真壁さんの毒舌、効きすぎじゃないっすか?」
「ははは、彼女の『泥舟』発言が、僕の脳に最高のデバッグをかけてくれたんだよ」
メンバーたちが口々に景の「有能さ」に感嘆の声を上げる。
だが、その隣で、怜の「絶対に折れない宣言」は、景の圧倒的な実力という名の鉄球によって粉砕されようとしていた。
――が。