その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


「……っ、あ、あああ! 真壁さん、助けてくれ!」

 怜が資料を隅々まで確認していると、突然、フロアの隅から景の悲鳴が上がった。
 弾かれたように振り向くと、そこには最新式の大型シュレッダーの前で、涙目で固まっている景の姿がある。

「!? どうしたんですか、一体」

「紙を……紙を入れようとしたら、急に彼が怒り出して……。止まらないんだ!」

 見れば、景は書類の束を、あろうことかクリップをつけたまま、シュレッダーの投入口に無理やり押し込んでいた。機械は「ギュイィィィ!」と断末魔のような異音を上げ、真っ赤なエラーランプを点滅させている。

「……クリップ。外してないんですか」

「えっ? クリップも一緒に食べてくれるものだと思って……。アメリカのやつはもっと、こう、パワフルだったんだ!」

「ここは日本です! もう、退いてください!」

 怜は呆れ果てて、景を脇に退けると、手際よくシュレッダーのカバーを開けた。
 詰まった紙をピンセットで慎重に取り除き、ローラーに挟まったクリップを救出する。

「……直りました。次からは数枚ずつ、丁寧に入れてください。もちろんクリップは外して。あと、この『逆転』ボタンを押せば、詰まった紙は戻ってきますから」

「『ぎゃくてん』……。ああ、この漢字か! ありがとう、真壁さん。君はやっぱり優しいね。そう、例えるなら……君は僕の前に舞い降りた女神(ミューズ)! 道に迷った僕を、君が正しく導いてくれる!」
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