隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません

26 誤解

 ポリウス各地を周り瘴気を浄化してきたセイラたちは、ようやくレインダムへ帰ってきた。

「国王への挨拶と報告は、明日行うことになっている。色々あって疲れただろう?今日はゆっくり休んで、セイラ」

 屋敷に着いてすぐ、ダリオスにそう言われたセイラは、荷ほどきをすませて湯浴みをして、自室に戻り部屋の中を見渡してほっと息を吐いた。

(ああ、なんだかとても安心するわ。ポリウスの方が故郷なのに、なぜかレインダム、ダリオス様のお屋敷に戻ってきた方が安心感がある。ここでの生活が本当に楽しく、幸せだからよね)

 旅の間は色々とあってずっと気を張り詰めていた。緊張の糸が解けたのだろう、セイラはベッドに横になると、ベッドの柔らかさと洗い立てのいい香りに包まれてつい頬が緩んでしまう。ふと、左手の薬指の指輪が部屋の明かりに照らされてきらりと光った。

(そういえば、この指輪はポリウスにいる間、ダリオス様の妻という証のためにつけてて欲しいと言われていたけれど、帰ってきたのだから、お返ししたほうがいいのかしら?)

 正式な結婚指輪は後日、ゆっくり二人で選ぼうと言っていた。このままつけていていいのか、ダリオスに聞くべきだったと思いながら手をかざして指輪を眺める。

(それにしても、魔法でサイズ調整されていると行っていたけれど、本当にピッタリ指にはまっている。私が外したいと思わない限り外れないと言っていたけれど、本当に?)

 疑うわけではないけれど、ほんのちょっとした出来心だった。セイラは指輪を外して見ようと右手で指輪を掴むと、指輪はするり、と簡単に抜けた。

(えっ、本当に外れた!あんなにピッタリはまっていたのに!すごい)

 身体を起こして指輪を明かりに照らして眺めていると、指輪についている小さな一粒のオーロラ色の石がキラキラと輝いている。

「綺麗……!」

 うっとりして眺めていると、ドアがノックされた。

「セイラ、入るよ」
「はい」

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