隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
 ダリオスがティーセットを持って部屋に入ってきた。

「疲労回復と心が落ち着くハーブティーだ。そこでメイドが持ってこようとしていたから、代わりに俺が持ってきたよ……って、セイラ?」

 ティーセットをサイドボードに置きながら、ダリオスはセイラの手を見て目を見開く。

「どうして、指輪が?」
「あ、これは……」
「まさか、やっぱり俺のことが嫌いになったのか?やっぱり俺のことが怖くなって、指輪を外したのか!?」

 セイラが指輪を外して片手に持っていることに気づいたダリオスは血相を変えてセイラの手首を掴む。

「えっ、ちが……」

 セイラが否定する間もなく、ダリオスはセイラをベッドの上に組み敷いた。

「言っただろう、君がどんなに俺を怖いと思ったとしても、俺は絶対に手放さないって」

 苦しそうにそう言って、ダリオスはセイラの両手首を掴んだまま、セイラに強引に口づける。セイラが持っていた指輪は、反動でセイラの手からベッドの上にポロリと落ちた。

「んんーっ!!」

 セイラが抗議の声を上げようとうするが、ダリオスに口を塞がれていて声にならない。ダリオスは何度もセイラに口づけてから、ようやく唇を離してセイラの首元に顔を埋めた。息つぎもままならなかったセイラは、頭がぼうっとしてしまっている。

「お願いだ、お願いだから俺から離れないでくれ……こんな気持ちになるのは初めてなんだ。君を失いたくない、君と一緒にいたい」
「ダ、リオス様……誤解、です」

 はあはあと息を整えながら、セイラはなんとかダリオスに声をかけた。

「誤解?」
「ダリオス様が怖いから外したわけではなくて、ただ単に本当に私の意思だけで外れるのかなと思っただけです。そしたら外れたので、石を光に当てて綺麗だなと思っていたのに……」
「え」

 顔を上げたダリオスは、不安げな目をしながらも明らかに動揺した顔をしている。セイラが顔を真っ赤にしながら涙目でダリオスを見ると、ダリオスの顔は徐々に青ざめていった。

「ほ、んとう、に?」
「本当です!」

 涙目になりながらもキッ!とダリオスを睨むと、ダリオスは絶望的な顔をしながらセイラの両手首を離してセイラから離れ、ベッドの脇に座りなおして両手で顔を覆う。

「すまない……本当に……俺は最低だ」

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