隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません

39 危機的状況

 翌日、セイラたちは浄化が必要な二つ目の場所を訪れていた。

(昨日の場所よりも瘴気がかなり強いわ。速く浄化しないと瘴気がどんどん濃くなってしまう)

 到着した瞬間に、その場の空気がぐっと重くなるのを感じる。禍々しい瘴気が蔓延して、ルルゥやガイズたちも顔を盛大に顰めた。
 事前の情報ではここまで瘴気が酷いとは聞いていない。それだけ瘴気の進み具合が速いということだろう。

ふと、ガイズが辺りを見渡して剣に手をかける。

「……!魔獣の気配がする、全員警戒!セイラ様をお守りしろ!」
「ハッ!」

 ガイズが声を上げると、騎士団員たちが一斉にセイラの周りを囲み、剣を抜いて構えた。ルルゥも杖を構えて防御魔法をはる。

 瘴気で見えづらい前方に、ゆらり、と大きな影が見えた。その影はどんどん近づいてきて、姿がはっきりと現れる。

「……は?そんな……!」

 騎士の一人があ然として見上げるその先には、ミノタウロスのような大きな魔獣がいた。

「ミノタウロスのように見えるけど、それよりも遥かに魔力が高い……!しかも角も牙も爪も異常すぎる!瘴気で変異してるのね」

 ルルゥが杖を構え冷や汗を垂らしながらつぶやく。そのルルゥの声に反応するかのように、魔獣は視線をセイラたちの方へ向けた。

「チッ!」

 ガイズが舌打ちをしてから走り出す。ガイズの体が赤く光ると、魔獣はガイズを目で追いかかけ始めた。

「ガイズ様、自分に魔法をかけて囮になるつもりですね。セイラ様から距離を取るように魔獣を誘導してる」

 ルルゥの言葉に、セイラはただ目を見開いてガイズを見つめている。ガイズに続くように、他の騎士たちも魔獣を取り囲むようにして走り出した。

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