1度ならず2度までも君に恋をする
 全体が散らばり、私は彼に声を掛けるか悩んだ。

 どんな顔で久しぶりと言えばいい?
 何と声を掛けたらいい?

 聞きたいことだってたくさんあるし、会えてうれしいのに、それ以上に別れたあの日のことがフラッシュバックして、苦しさが上回る。

 真紘くんの方を見ていると、彼も視線をこちらに上げてみた。声を掛けるなら今しかない、と思いそっと近寄ると真紘くんはただただこちらを見ている。


「あ…」


 たった一文字を発するだけでも声が震えているのがわかる。まっすぐな瞳でただただこちらをとらえて、何も言わず私が何か話すのをじっと待っている。


「…久しぶり、元気だった?」


 少しだけ笑みを浮かべて問いかけた言葉に、真紘くんは「久しぶり」とだけ返した。久しぶりの再会は当然温かいものなどではない。それどころか冷え切っている。

 緊張もあり、ただ時間を奪っただけだと思われたくて必死に会話を続けようとした。


「ね!本当に、久しぶり!大学時代から、会ってなかったし…。真紘くんは…」


 そう話している最中に「やめて」と声が聞こえてきた。その声でびくっと自分でもわかるほどに体が揺れた。


「ここ、職場だし、今の俺は立場的には君の上司だよ。君だけなれなれしく話すのを許すことはできないし、勤務中は止まって思い出を話す時間でもない」


 厳しい言い方だったけれど、確かにそうだった。社会人が仕事を放り投げて、動揺してどうにか話そうとするなんて確かに間違えていた。


「…申し訳ございません」


 真紘くんはそれ以上私の方を見ることもなく、デスク周りをきっちりと整理している。作業するスペースに物が多くあるのを嫌う人で物は引き出しや棚などに綺麗に整理されていくのを見た。

 この短時間で何も変わっていないところも見つけて、それがまた、嬉しいというより痛かった。
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