1度ならず2度までも君に恋をする
 来て、と言われれば行きたいに決まっている。

 けれど、これ以上、ただ流されるだけの私ではいられない。彼と香月さんの関係だけでも聞いておきたい。


「もう一つだけ」

「何?」

「香月さんとは、ただの友人ですか?」


 問いかけた瞬間、真紘くんの表情がわずかに強張るのを私は見逃さなかった。心臓が嫌な音を立てていた。直感が何かあると警鐘を鳴らす。

 彼が口を開くのを、呼吸を忘れて待つ。
 真紘くんは軽く息を吐くと、私から目線を逸らした。


「…元カノ」

「…え?」

「二年くらい前に付き合って、一年くらい前に別れた」


 元恋人。あまりに明確なその響きに、言葉を失った。

 終わった関係だけれど、絶体絶命の現場で真っ先に頼り、二人きりで食事に行き、またねと名前で呼び合うほど、今の二人はまだ深く繋がっている。

 私と別れた時は、何一つ残さないように縁を切り捨てたというのに、この扱いの差は、何なんだろう。彼にとって、私は何だったんだろう。

 五年前の自分と、今の香月さん。そのあまりに不公平な対比に、喉の奥からはっ、と乾いた笑いがこぼれた。

 絡められていた指先からゆっくりと、私は自分の方から手を離した。真紘くんの手が、逃げていく私の手を追いかけるようにしていたけれど、彼はそれを掴み直すことも、強引に引き寄せることもできず、ただ行き場を失ったようにそっと力なく下ろされた。
< 101 / 149 >

この作品をシェア

pagetop