1度ならず2度までも君に恋をする
「な、んで、意味わかんないよ。私の話も聞かないで一方的に突き放して」

「ごめん、何も言い返す言葉ない。君の為、なんて言いながらあの日関係を一切切ったのも、実際に君と他の誰かが幸せになるところを見たくなくて逃げた」


 彼は私を幸せにするために離れたと言いながら、その幸せな姿を見たくないという矛盾を抱えていた。

 それほどまでに私を想ってくれていたのなら、どうして傍にいてくれなかったのか。どうして私の本当の気持ちをもっと見てくれなかったのか。

 この五年間、沢山の後悔と疑問を抱えたまま、ずっと苦しい日々を過ごしてきた。

 視界が涙で滲む。真紘くんは私をそっと抱き寄せると、優しく頭を撫でた。耳元で、震えるような低い声が何度も「ごめん」と繰り返される。


「君と再会した時も、こんな風に関わるつもりじゃなかった。突き放したんだから、俺なんかがこんな風に君に近寄って触れちゃ駄目だって思ってたのに、再会してからどうしようもなかった」

「…後悔してた?ずっと」

「してた。忘れたことなんかない」

「香月さんと付き合ってたくせに?」


 そう責めるように言うと、気まずそうな表情をしながら、私の顔を見ている。


「…仕事でも忘れられなかったから、誰かと付き合えばって思ってた時に告白されて、流れで付き合った」


 それを聞いても、胸の(おり)は消えない。再会の予定がない未来なら、彼が誰かと恋をするのは仕方ないのかもしれないけれど、私の代わりを見つけようとしていたという事実は消えない。それを知ると嫉妬となって胸を鷲掴みにされた様な気持ちになった。
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