1度ならず2度までも君に恋をする
 午後一番のタスクを最速で片付け、私は逃げるように資料室へと駆け込んだ。

 その場所は、冷んやりとした空気と古い紙の匂いに満ちている。膨大な資料の山を前に立ち尽くしそうになるけれど、幸い、棚の目星はついていた。

 今日だけで彼のコピーを見つけ出せるとは限らない。自分の案件も抱えている以上、与えられた時間はわずか。何の収穫も得られないまま、ただ時間を浪費して終わるかもしれない。

 だけど、今の私に止めるという選択肢はなかった。





◝✩






 棚から重厚なファイルを一つずつ抜き出し、必死にページを捲り続けていたその時だった。

 ドアが、静かに開く。
 入り口の方を棚から覗き込むと、そこには佐久間さんが立っていた。


「あ、お疲れ様です」

「いると思った」


 佐久間さんはそう言ってこちらへ歩み寄ると、一冊のファイルを手に持っていた。

 それを見つめていると、佐久間さんはクスッと肩を揺らす。


「令和の時代にそんな手作業で探さなくても、今時インターネットでもすぐに出て来るのに」

「あ…、そっか。資料室しか頭に無かったです」


 自分の視野の狭さに深くため息を吐いた。

 彼のことになると、どうしてこうも余裕がなくなってしまうのだろう。スマートに解決するよりも先に、自分の足を使って、自分の目で彼のコピーに触れたいと本能的に動いてしまっていた。

 情けなさに肩を落とす私を見て、佐久間さんは「まあ、その熱意が森山の良さじゃない?」と付け加え、手元の資料をそっと私の方へ差し出した。


「後、佐野には黙っててほしいんだけど、この中には佐野の没案とかも全部ある」

「な…、どこでそんなもの手に入れてくるんですか!」

「…内緒。佐野に怒られそう~」


 そう言いながら笑う佐久間さんに唖然とした。
 何者なんだこの人…。

 困惑しながらも差し出された資料を受け取ると、ずっしりとした重みが伝わってきた。それは、完成された綺麗な言葉だけではない。少し焦ったような筆跡もある、手書きのコピー。
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