1度ならず2度までも君に恋をする
「真紘くんはどうしてた?」

「違う会社で今の森山さんと似たような仕事をしてた。だけど、2か月前くらいに辞めて、佐久間さんに拾われた」

「佐久間さんに?」

「そう。うちの会社の面接を受けてみればって言われて受けて内定もらって入社したけど、森山さんが居るのは知らなかった」

「聞いてなかったの?」

「まったく」


 佐久間さん話さなかったんだ。

 良くも悪くもそれで引き合わせられてしまった。

 今日も雨が降っていて、今は嘘だったように晴れて欠けた月が綺麗に見えている。こんなに高いビルの上だと街の喧騒とか車の走る音も聞こえてこなくて静かだった。

 やっぱり、今日みたいな雨が降る日は君といつも何かが起きる。


「覚えてる?初めて会った日も雨降ってたの」

「そうだっけ?」

「そうだよ。雨降っててそれで声掛けてくれたんだから」


 彼にとったら最初の出会いから忘れたい過去だったのだろうか。まるでなかったように話す事が寂しい。

 私が何も言えずに居ると、真紘くんはほんの少し笑みを零す。


「覚えてるよ。ちゃんと」

「…本当に?」

「覚えてる。止まないのにずっと空眺めてた。みんなサークル選びに夢中になってるのに、君だけ生徒玄関でずっとたちっぱで」


 ほんの少しだけ声色が柔らかくなっていた気がする。
 お互いに緊張していた糸が少し解けて緩んでいく。

 優しい真紘くんの表情にほんの少し私も緩み、笑みが浮かんだ。
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