1度ならず2度までも君に恋をする
「懐かしい。忘れられないよな。初対面なのに急に一緒の傘入って」

「変だなって思ってたよ。でも先輩だし断ったら…、って考えて断れなくなった」

「やめてよ。圧かけたみたいな言い方」


 軽く笑う真紘くんに思わず釣られて笑った。

 気になっていたことを聞きたかったのに、今はこの空気が心地よくて壊したくなかったから聞かなかった。今はこの時間が恋しくて、過ごしていたくて。

 大事な問題を先延ばしにして逃げただけかもしれない。ここで聞かなかったらいつ聞くのかわからないけど、今日は再会出来たって、その事実だけで充分。


「でも今日は、冷たかった。俺は君の上司なんて言葉を真紘くんから聞くなんて思ってなかったし」


 そう揶揄う様に言うと真紘くんは冷ややかな視線をこちらに向けてくる。


「俺の真似のつもり?似てないから」

「結構似てると思う。不愛想な感じ」

「好き勝手言うのやめて」


 真紘くんの本気で嫌そうな態度に少し笑った。こんな風に会話ができる日がくるなんて全く思っていなかったからうれしかった。

 さっきまで緊張していたのに、今はこんなにも浮かれている。再会出来たことも、話せたことも、思い出を覚えていてくれたことも嬉しくて、口元が緩みっぱなしだった。

 まだこれから時間はあるし、聞きたいことは後々確かめていきたい。今はとにかくこの関係性を取り戻せたらなんて、考えていた。


「そういえば金曜日、行ってもいいの?」

「別に来たらいいんじゃないの?俺が決めることではないし」

「そう、だけどさ。正直、朝のこともあって嫌われてるのかと思ってた」

「…誤解させたのはごめん。嫌ってたわけじゃない」


 少し気まずそうに謝罪をする真紘くん。私も過去のことがあるから、そう思い込んでいた節は確かにあった。

 謝罪を受け、彼に敵意やそんなものが無かったとわかっただけで今はいい。
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