1度ならず2度までも君に恋をする
 ソワソワとしながら迎えた金曜日。仕事はきっちりと定時に終え、会社の前で佐久間さんと真紘くんと待ち合わせた。

 一緒に真紘くんとオフィスを出ると目立ちそうな為、白々しく別行動なんてして「お疲れ様です」なんて挨拶までしあって、エントランスに着くと会社の外には既に佐久間さんの姿が見えた。

 少し顔を下に向かせながらスマートフォンを眺めていて、その立ち姿だけでも女性の目を引く。

 佐久間さんは社内で人気の男性で、更に独身なので独身女性が猛アタックをしているのを何度も見たことがある。サラッと躱すのが上手な人で、あまりアタックする女性に興味を示していない。

 性格が基本的に温厚で、その上で頼りになる人なのだけど、仕事に妥協を許さない人でそんな所も格好いいと評判だった。その上柔らかそうな茶髪に少し垂れた目が優し気で、親しみやすさを放っている。

 佐久間さんと仕事をしていた時は、常に楽しかった。褒める所は褒めてくれ、その上で的確なアドバイスをくれる。

 私が入社してすぐの時、最初に希望した部署には入れず、それでもコピライターへの夢を追い続けていた時には「必ずこの部署での業務が君のやりたい部署での業務に役立つから、今はやりたい仕事ではないかもしれないけど、コピーライターへの1歩だと思ってて」と慰めてもらい、その間裏で何度も人事局に相談に行ってくれていたのを知っている。

 その当時の佐久間さんのお陰で私は希望部署につけている。部下思いでこんなに向き合ってくれる上司も中々いないのではないかと思った。

 一人で立ち、待っている佐久間さんの元へ「お疲れ様です」と声を掛けながら隣に並ぶ。
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