1度ならず2度までも君に恋をする
「佐久間さん、相変わらずすぎます。熱中したらまわりが見えなくなるの」

「そういいながら佐野だって並んで歩いてたくせに」

「俺の意識奪ってくるから」

「あ、あの…」


 なんだか子供のような言い合いに発展してしまっていることに、少し唖然とした。普段は大人のイメージしかない二人がこんな風に言いあうのか、となんだか意外で。

 真紘くんが負けず嫌いなのはよくわかっていたけれど、こんな風に誰かと言いあうのは本当にその人と仲がいい証拠だと思う。そこまで関係が出来ていない人との、無駄な会話を嫌う人なのはよく知っている。


「大丈夫です!行きましょう!全然走りますので!」

「走らなくていいから」


 真紘くんはそうツッコミを入れると腕から手を離し、自然と私の右隣に立つ。その行動に少し驚いた。

 佐久間さんも少し驚いた表情をしたが、少し微笑むとそのまま私の左隣に立ち、歩幅を合わせながら歩いてくれた。


「君の歩幅はわかってるつもりだけど、早かったら言って」


 その言葉でもう終わっている過去の関係性を少し肯定された気分になった。歩幅を覚えてもらえるくらい何度も何度も隣を歩いて、その染みついたものが簡単には取れないことを私も知っている。

 この人の感情を読み取ろうとして、表情や行動を無意識に追ってしまう私の癖のように、真紘くんにも私の染みついて離れないものがある。

 その事実に胸がいっぱいで、真紘くんの言葉に「…うん」と小さく返事をすることしかできなかった。

 そんな私達の様子を見ていた佐久間さんがクスッと笑って私の顔を横から覗き込んでくる。


「俺とも覚えるくらい一緒に歩こうね…って、言ったら今の時代、この発言はセクハラ?」


 私が何かを答える前に真紘くんが冷たい声で「セクハラです」と言い放っていて、佐久間さんは笑っていた。

 少しだけ説明し難いよくわからない空気感になってしまっている気がして困惑した。
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