1度ならず2度までも君に恋をする
 夕飯を共にした後、夕食代は佐久間さんが持ってくれた。
 いつも共にご飯に行くと、支払いをしてくれる。

 店の前で私と真紘くんは並んだまま佐久間さんと向かい合った。


「佐久間さん、いつもありがとうございます」

「ありがとうございました」

「いいよ、可愛い後輩達のためだから。じゃあ、佐野これからよろしく」

「はい」

                                                                                              
 そんな会話をすると佐久間さんは私達を置いて「それじゃあ」と言い、この場を離れて行った。私と真紘くんはこの場で少し留まる。

 今日は雨の予報だと聞いていたのに、幸い雨はまだ降っていない。

 帰宅するなら今の内だけど、今はまだ離れ難い。
 だって何も話せていない、知りたい事も、何も。


「…明日予定は?」

「ないけど」

「いろいろ話したい事ある」


 私がそう言った時、話したい事が何であるかを察したのかほんの少し表情をこわばらせた。

 素直に話してくれるかはわからない。
 知りたい事を教えてくれない可能性がある。

 それでも少しでも過去の呪縛から解かれたかった。このままじゃ、いつまで経っても忘れられず、前を向けないままだから。


「…その当時の話、今頃する必要ある?もう過去の事だよ」

「真紘くんにとっては終わった過去の話かもしれないけど、私はずっと引き摺って忘れられないままなんだよ」


 何を考えているかわからない。

 あの日どうして去ったのか。
 あの日以降どう過ごしていたのか。
 どうして書けなくなったのか。
 私の事嫌いになってしまったのか。

 知りたい事はたくさんある。その中でも、どうして彼が別れを選んだのか知らなくちゃ前に進めない。
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