1度ならず2度までも君に恋をする
 真紘くんが悩んだ表情をして、何か言おうとした時、頬に冷たい粒が落ちてきてすぐに下に滑り落ちた。細く冷たさの痕が頬に残っていて、その時ようやく理解した。


────雨が、降って来た。


 この雨のタイミングはよくない。

 空を眺め泣き出しそうな薄灰色の雲の様子を見ていた。
 真紘くんも雨に気付いたのか、共に空を眺めている。

 忠告された通りに傘は鞄の中に入っている。
 だけど…、だけどこのまま帰りたくはない。

 もうこんな二人で話せるタイミングなんて何度も来るものじゃない。

 ここで傘を開いて帰ったらきっと今夜の事はなかった事になる。だから、鞄の中にある折り畳み傘を取り出せなかった。

 雨粒は少しずつ肌に当たる量が増え始めた。真紘くんの方を見るとこちらを向いており、見つめ合う。

 まだ一緒にいたいのに、引き止め方がわからない。

 どうやって引き止めようかと焦る気持ちのまま考え込んでいると、彼は私の手首を掴んで「こっち」と言い、行き先も告げぬままどこかに歩き出した。
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