1度ならず2度までも君に恋をする
 抗えなかった。

 ゆっくりと、吐息が重なる距離まで彼の顔が近づいてくる。拒む時間はいくらでもあったはずなのに。

 私が拒否しないのを確認すると、そのまま今度は迷いも無く唇を重ね合わせた。

 柔らかな、記憶の底にあるのと同じもの。こんな風に慈しむような優しいキスをされたのは、まだ二人が学生だった頃のことで、とっくに忘れてしまったと思っていた。

 真紘くんの手が私の背中と後頭部へと回り、逃げ場を塞ぐように固定される。密着した身体から彼の早い鼓動と体温が伝わる。彼も私の存在を確かめるように触れながら、何度も、何度も、確かめるように優しく唇を重ねられた。

 頭の中は、激しい困惑でいっぱいだった。あの日、私を突き放して別れを選んだのは、間違いなく彼で、その後、今日まで一度も連絡すら取れなかった。

 その理由も分からないから勝手に憎まれているからだとすら思っていた。

 それなのに、このキスにはまるで、ずっと私を求めていたような熱情が籠もっている。

 どういうことって問いかけて、勝手なこの人を怒りたいのに、そんなこと、できなかった。

 今はこの人に触れられた喜びで、何も考えられなくなってしまったから。
< 31 / 149 >

この作品をシェア

pagetop