1度ならず2度までも君に恋をする
「わかりました。帰りますね」
ぎこちなく笑顔を作り、私は逃げるように荷物をまとめた。
その間、彼がどんな顔で私を見ていたのかは分からない。
見るのが怖くて、一度も視線を上げられなかった。
急ぐ手つきで支度を終え「お邪魔しました!」と、一口も付けていないコーヒーをそのままにして玄関へ向かう。すると真紘くんは、私の後を追うように玄関先まで来ると「送る」と短く言い放った。
こんな時まで、この人は私に優しさを見せてくる。ずるい。その無自覚な優しさが、今の私には何よりも残酷だということをわかっていない。
「…朝ですし、大丈夫ですよ」
自分でも驚くほど乾いた声だった。明るく返せたのか、それとも拒絶が滲んでしまったのかさえ分からない。
それでも彼は相変わらずの無表情さで、まっすぐに私を見つめていた。
「…じゃあ、また会社で」
彼の返事を聞くのが怖くて、それだけを無理やり笑顔で告げると、逃げるように家を飛び出した。
聞きたいことは、何一つ聞けなかった。五年越しの再会。
一夜を過ごした果てに突きつけられたのは、忘れてという残酷な言葉だけ。真紘くんにとって昨夜は何の意味もなく、ただの"間違い"でしかなかった。
その事実が、心臓を鋭く抉るように痛い。
エレベーターを待つ間、静まり返った廊下で自分の鼓動だけが響いている。背後のドアが開く音を、彼が追いかけてくる足音を、心のどこかでもしかしたらと期待をしてしまっている自分がいた。
けれど、いつまで経っても真紘くんの部屋の扉が開く気配はない。代わりに到着を告げる電子音が、私の元に戻れるかもしれないという期待を冷たく打ち消した。
ぎこちなく笑顔を作り、私は逃げるように荷物をまとめた。
その間、彼がどんな顔で私を見ていたのかは分からない。
見るのが怖くて、一度も視線を上げられなかった。
急ぐ手つきで支度を終え「お邪魔しました!」と、一口も付けていないコーヒーをそのままにして玄関へ向かう。すると真紘くんは、私の後を追うように玄関先まで来ると「送る」と短く言い放った。
こんな時まで、この人は私に優しさを見せてくる。ずるい。その無自覚な優しさが、今の私には何よりも残酷だということをわかっていない。
「…朝ですし、大丈夫ですよ」
自分でも驚くほど乾いた声だった。明るく返せたのか、それとも拒絶が滲んでしまったのかさえ分からない。
それでも彼は相変わらずの無表情さで、まっすぐに私を見つめていた。
「…じゃあ、また会社で」
彼の返事を聞くのが怖くて、それだけを無理やり笑顔で告げると、逃げるように家を飛び出した。
聞きたいことは、何一つ聞けなかった。五年越しの再会。
一夜を過ごした果てに突きつけられたのは、忘れてという残酷な言葉だけ。真紘くんにとって昨夜は何の意味もなく、ただの"間違い"でしかなかった。
その事実が、心臓を鋭く抉るように痛い。
エレベーターを待つ間、静まり返った廊下で自分の鼓動だけが響いている。背後のドアが開く音を、彼が追いかけてくる足音を、心のどこかでもしかしたらと期待をしてしまっている自分がいた。
けれど、いつまで経っても真紘くんの部屋の扉が開く気配はない。代わりに到着を告げる電子音が、私の元に戻れるかもしれないという期待を冷たく打ち消した。