1度ならず2度までも君に恋をする
「…諦められないんでしょ?」


 夏帆ちゃんに図星を突かれ、心臓が跳ねた。
 その後、思わず苦笑いが漏れる。


「…わかる?」

「わかるわよ。未練あるって顔してる」


 そう言いながら、彼女は少し笑って口元を軽く手元の紙ナプキンで拭いた。

 人から指摘されるほど、私は情けない顔をしていたらしい。

 大学時代から、彼を好きで、好きで仕方がなかった。再会してからその想いはさらに加速し、忘れるどころか、諦めるための方法さえわからない。

 私、一体何をやっているんだろう。
 振り回されて、ひとりで勝手に傷ついて。


「新しい恋を見てみるってのもありだと思うけどね」

「何それ」

「佐久間さん、とか?」

「何で、佐久間さん」

「好物件じゃない?独身だし、優しいし、佐野さんみたいな傷付けられ方はしないと思うけど」


 たしかに、佐久間さんは私にとって何でも話せる唯一の先輩であり、信頼できる上司だ。

 けれど、佐久間さんも私もお互いをそんな風に、異性として意識したことなんてきっと一度もない。

 気心の知れた先輩と過ごす時間は、穏やかで、あたたかい。真紘くんといる時のように、胸が締め付けられることも、答えの出ない不安に苛まれることも、きっとないとは思う。

 …もし、好きになる相手が佐久間さんだったら、きっと今よりもずっと穏やかな気持ちで、恋ができていたと思う。けれど、そう思えば思うほど、正反対の場所にいる真紘くんの存在が、より鮮明に私の中に居座り続ける。

 平穏で真っ直ぐな優しさよりも、あの不器用で、時折息が詰まるほど切なくなる彼の優しさが欲しい。どれだけ拒絶されようと、傷つく道を選んででも、まだ私は彼に恋をしたがっている。
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