1度ならず2度までも君に恋をする
 オフィスに戻り、自分のデスクで画面をぼんやりと眺めていた。

 画面に映っているのは、先ほど共有されたばかりの会議の議事録だ。先程のデータなどが表示されている。

 確認しなければならないことは山積みだというのに、指先ひとつ動かせないなかった。文字を目で追っても、その意味が脳にまで届かずにそのままこぼれ落ちていく。

 その間、自分の実力の低さに打ちひしがれ、まともに仕事になりはしない。

 溜息を零し、自分の顔を両手で覆った。

 この仕事は、好きだ。

 悩み抜いて絞り出した自分のキャッチコピーが映像や画像となり、ひとつの作品として映し出される。その瞬間、身体の内側から込み上げてくる達成感や高揚感は、何物にも代えられない宝物だ。

 だけれど、そもそも私のキャッチコピーは、発信できるレベルにも達さないもので、"宝物"を受け取る価値すら、今の私にはなかった。

 集中もできないままデスクに着いていると、視界に影が差し、小さな缶のカフェオレが置かれた。カタン、という軽い金属音に弾かれるように顔を上げると、そこには真紘くんが立っていた。


「お疲れ」

「お疲れ様、です…」


 まさか声がかかるなんて思ってもいなくて、間抜けな顔をして見上げてしまった。

 会議の時のディレクターの顔ではない。けれど、かつて恋人だった頃の優しい顔でもない。今の彼は、流すような目つきで私のパソコンの画面に視線をやっている。

 どうしてここに、とそう問いかけたかったけれど、その言葉は喉の奥で噤んだ。

 煮詰まっているこの惨めな状況を見られる羞恥心の方が勝り、今は言葉を交わすよりも早く立ち去ってほしかったから。
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