1度ならず2度までも君に恋をする
 この時間は、何度経験しても慣れない。

 今、差し出した言葉は、私の思考の結晶であり、剥き出しの感性そのものだ。もし否定されれば私の実力の低さが露呈され、肯定されればまだこれからの自分の実力に希望が持てる。

 早く何かを言ってほしいという渇望と、まだ何も言わないでほしいという拒絶。相反する感情が胸の中でせめぎ合うのを、私はただじっと、膝の上で指を絡めてやり過ごす。

 やがて、資料をめくるかすかな音が止まった。彼がゆっくりと顔を上げる。


「すごくいいと思う」

「…へ?」


 思わず間抜けな声が漏れた。まさか、一言目に肯定の言葉をもらえるなんて想像もしていなかったから。


「凛とで自分を律し、甘くで自分を慈しむ。リズム感も、すごくいい。余計な言葉もなく、それでもよく伝わる」


 佐久間さんは資料を机に戻すと、いつもの柔らかな微笑みを浮かべた。

 ピンと張り詰めていた緊張の糸がふっと解け、私は「ありがとうございます!」と勢いよく頭を下げた。


「次のブレスト会議、楽しみだね」


 佐久間さんに認めてもらえた。その事実が、何よりも胸を熱くさせた。佐久間さんの優しい声に、私は弾んだ声で「はい!」と答えた。
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