1度ならず2度までも君に恋をする
結局「何でもない」と、意地を張り続ける真紘くんを半ば強引に連れ出し、駅までの夜道を並んで歩いていた。
彼のことはもう諦めると決めたはずなのに、結局放っておけない自分に、何をやっているのかと呆れる。こんな調子じゃ諦めるどころか、また想いを再燃させて同じことの繰り返しになるだけだ。
真紘くんは一言も発さないまま、ただ地面に視線を落として歩いている。仕事の話をする空気でもなければ、先ほどの会話の続きをするような雰囲気でもない。
街灯が規則正しく私たちの影を伸ばしては縮め、冬の入り口の冷たい空気が肌を刺した。私は身を縮ませ、その間焦らすことも、問い詰めることもせず、彼が自分の中で言葉を整理し、話し始めるのを、ただ静かに待っていた。
ちょうど街灯の光が途切れたところで、彼が不意に足を止めた。視線は相変わらず地面に落とされたまま。
私も引っ張られるように足を止め彼を見る。
「あのさ…」
そう絞り出さ絞り出された声は、なんとも言い難い響きを含んでいた。低く、かすかに震え、彼自身も自分の感情に困惑しているような、そんな脆い声。
「うん?」
「…確かに、尊敬出来る上司から学べる君はまだまだ伸びしろある、とは、言ったけどさ」
「え?」
確かに、以前そんな話をされた記憶はある。けれど、どうして今、唐突にその話が引き合いに出されるのか、私は戸惑いを隠せなかった。
「…今の、君の上司は俺じゃん」
「そう、だね…?」
「コピーライターとしては、あの人よりはキャリアだってある。それなのに…」
そこまで言って、彼は重く、深い溜息を吐いた。夜の静寂に紛れて消えてしまいそうなほど小さな、けれど確かな苦みを含んだ呟きが、私の耳に届く。
「どこまでいっても佐久間さんなんだな…」
心臓が大きく跳ねた。その言葉に込められた響きが、あまりに痛切だったからだ。私は、信じられない思いで目を見開いた。
それは、隠しようのない純粋な嫉妬に聞こえた。
いつも私を突き放してきた彼が、私の視線の先にあるのが自分ではないことに、ひどく傷ついている様な、そんな態度。
彼のことはもう諦めると決めたはずなのに、結局放っておけない自分に、何をやっているのかと呆れる。こんな調子じゃ諦めるどころか、また想いを再燃させて同じことの繰り返しになるだけだ。
真紘くんは一言も発さないまま、ただ地面に視線を落として歩いている。仕事の話をする空気でもなければ、先ほどの会話の続きをするような雰囲気でもない。
街灯が規則正しく私たちの影を伸ばしては縮め、冬の入り口の冷たい空気が肌を刺した。私は身を縮ませ、その間焦らすことも、問い詰めることもせず、彼が自分の中で言葉を整理し、話し始めるのを、ただ静かに待っていた。
ちょうど街灯の光が途切れたところで、彼が不意に足を止めた。視線は相変わらず地面に落とされたまま。
私も引っ張られるように足を止め彼を見る。
「あのさ…」
そう絞り出さ絞り出された声は、なんとも言い難い響きを含んでいた。低く、かすかに震え、彼自身も自分の感情に困惑しているような、そんな脆い声。
「うん?」
「…確かに、尊敬出来る上司から学べる君はまだまだ伸びしろある、とは、言ったけどさ」
「え?」
確かに、以前そんな話をされた記憶はある。けれど、どうして今、唐突にその話が引き合いに出されるのか、私は戸惑いを隠せなかった。
「…今の、君の上司は俺じゃん」
「そう、だね…?」
「コピーライターとしては、あの人よりはキャリアだってある。それなのに…」
そこまで言って、彼は重く、深い溜息を吐いた。夜の静寂に紛れて消えてしまいそうなほど小さな、けれど確かな苦みを含んだ呟きが、私の耳に届く。
「どこまでいっても佐久間さんなんだな…」
心臓が大きく跳ねた。その言葉に込められた響きが、あまりに痛切だったからだ。私は、信じられない思いで目を見開いた。
それは、隠しようのない純粋な嫉妬に聞こえた。
いつも私を突き放してきた彼が、私の視線の先にあるのが自分ではないことに、ひどく傷ついている様な、そんな態度。