1度ならず2度までも君に恋をする
「どう…、いう意味?」


 自分でもわかるほど震えている声で問いかけ返すのがやっとだった。


────どこまでいっても佐久間さんなんだな…


 彼の言葉は、あまりに痛々しく、切り裂かれたような響きを帯びていた。

 そんなわけがない。私はいつだって、彼だけを見ていた。真紘くんより佐久間さんを優先したことなんて、ただの一度だってない。

 それなのにどうして、そんなに切ない表情でそんな言葉を吐くのか、理解が出来なかった。

 思考の整理が追いつかないまま、私はただ彼の次の言葉を待った。

 街灯の届かない暗がりの中で、二人の間に流れる空気が、やけに重たく、冷たい。


「…なんでもない、忘れて」


 出た、また"忘れて"。

 その言葉に私の中で張り詰めていた糸が、音を立てて切れた。


「また忘れてって…、毎度毎度なんなの!?忘れられるわけないじゃん!」


 吐き出した言葉で、私のこの苦しみが少しはわかると思った。一度は受け入れるふりをして、最後には"忘れて"と閉ざされる。その拒絶がどれほど痛くて、苦しくて、惨めなものか。

 けれど、真紘くんは驚くでも、怯むでもなかった。いつもの、何を考えているのか少しも読み取れない無表情さのまま、私を見つめていた。

 私の気持ちを理解してくれていないような、理解した上で何も感じていないような…、そんな彼の表情が、私の惨めさをいっそう色濃くした。


「…毎度、苦しいよ。そんな風に…、本音が聞けたとか、近付けたと思うたびに、忘れてって、距離を取られるの」


 もう、怒っても駄目だ。

 そう理解した途端、自分でも声が弱まっていくのがわかった。

 近づきたいのに、どう歩み寄ればいいのか分からない。こちらが近寄るのを諦めると向こうから寄ってくるくせに、私が手を伸ばすと、彼はまた遠くへ離れていく。

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