1度ならず2度までも君に恋をする
 お酒が進むにつれて、テーブルには次々と料理が揃い始めた。話題は仕事の話がメインだったけれど、アルコールが回るほどに会話は少しずつプライベートな話へと溶け出していく。


「最近さ、佐野とはどうなの?」


 不意に投げかけられたその名前に、箸を動かす手が止まった。


「うーん…」


 すぐには言葉が見つからなかった。

 あの日以来、険悪な空気ではない。
 けれど、以前のように笑い合えるわけでもない。

 会社ですれ違うたびに、お互いに一度目が合ってもすぐに視線を逸らす。

 嫌いになったわけじゃない。お互いを意識しすぎているせいで、かえって身動きが取れなくなっている。

 そんな曖昧な今の関係を、私はどう説明すればいいのか分からなかった。


「じゃあ、聞き方変えようかな。佐野の事、どう思ってる?」


  問われた瞬間、答えはもう心の中で決まっていた。五年前、彼と離れたあの日から、この感情だけは形を変えることはなく、ずっと同じ場所にある。


「…まだ、好きです。ずっと」


 絞り出すようにそう答えると、佐久間さんは否定も肯定もせず、ただ小さく微笑んで「そっか」と短く呟いた。

 好きだからこそ、曖昧な関係性と距離感が苦しい。

 空白の五年間に彼が何を見て、何を思ってきたのか。
 今の彼の中に、私の居場所はもう一ミリも残っていないのか。
 何も知らないことが、ただ怖くて、虚しい。

 どう彼と向き合えばいいのか。
 彼に踏み込むにはどうしたらいいのか。
 私には、その答えがどうしても分からなかった。
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