1度ならず2度までも君に恋をする
それから私は、学内で真紘くんを見かけるたびに、積極的に声を掛けるようになった。
「佐野せんぱーい!」
声を上げると、彼は決まって足を止め、わずかに首を傾げて振り返る。そんな彼特有の癖がたまらなく愛おしくて、私は彼を呼ぶたびに頬が緩んだ。
急いで駆け寄り、「これからサークルですか?」と横に並ぶ。
「そう、森山さんも?」
「そうなんです。一緒に行ってもいいですか?」
「どうぞ」
普段は人といるのを好みそうにないのに、私のお願いに拒まない。少しだけ気を許されていると、そんな気になった。
そのまま並んで歩き出すと、真紘くんの歩くスピードが、ふっと緩やかに落ちるのが分かった。
(あ…、今、歩幅合わせてくれたんだ)
本人は無自覚なのだろうけれど、そんなやんわりとした優しさに触れるたび、彼に対しての気持ちは加速した。
ただ隣にいる。それだけのことが、今の私には何よりも贅沢な幸せだった。
「…ふふ」
思わず笑みがこぼれると、真紘くんは一瞬だけきょとんとして、それからいつもの無表情に戻り、不思議そうに首を傾げた。
「何で笑ってんの?」
「佐野先輩って、優しいですよね」
「何、急に。媚び売っても佐久間さんみたいにお菓子持ち歩いてないよ」
「そんなつもりで言ってないですから」
佐久間さんは確かに、会うたびに「これ食べる?」とポケットからチョコレートや飴玉を差し出してくれるけれど、そんなこと彼に望んでなんかいない。
それは私なりの、精一杯のアピールだった。言葉にできない代わりに、こうして気付かれるか気付かれないか程度の発言をする。隠した好意に気付いてほしいような、気付いてほしくないような、そんなくすぐったい気持ちだった。
この時の私は、まだ好きという言葉を直接、彼に投げつける勇気なんて、これっぽっちも持っていなかった。
「佐野せんぱーい!」
声を上げると、彼は決まって足を止め、わずかに首を傾げて振り返る。そんな彼特有の癖がたまらなく愛おしくて、私は彼を呼ぶたびに頬が緩んだ。
急いで駆け寄り、「これからサークルですか?」と横に並ぶ。
「そう、森山さんも?」
「そうなんです。一緒に行ってもいいですか?」
「どうぞ」
普段は人といるのを好みそうにないのに、私のお願いに拒まない。少しだけ気を許されていると、そんな気になった。
そのまま並んで歩き出すと、真紘くんの歩くスピードが、ふっと緩やかに落ちるのが分かった。
(あ…、今、歩幅合わせてくれたんだ)
本人は無自覚なのだろうけれど、そんなやんわりとした優しさに触れるたび、彼に対しての気持ちは加速した。
ただ隣にいる。それだけのことが、今の私には何よりも贅沢な幸せだった。
「…ふふ」
思わず笑みがこぼれると、真紘くんは一瞬だけきょとんとして、それからいつもの無表情に戻り、不思議そうに首を傾げた。
「何で笑ってんの?」
「佐野先輩って、優しいですよね」
「何、急に。媚び売っても佐久間さんみたいにお菓子持ち歩いてないよ」
「そんなつもりで言ってないですから」
佐久間さんは確かに、会うたびに「これ食べる?」とポケットからチョコレートや飴玉を差し出してくれるけれど、そんなこと彼に望んでなんかいない。
それは私なりの、精一杯のアピールだった。言葉にできない代わりに、こうして気付かれるか気付かれないか程度の発言をする。隠した好意に気付いてほしいような、気付いてほしくないような、そんなくすぐったい気持ちだった。
この時の私は、まだ好きという言葉を直接、彼に投げつける勇気なんて、これっぽっちも持っていなかった。