1度ならず2度までも君に恋をする
 並んで歩きながら、他愛のない話をしていた時だった。
 ぽつり、と冷たい水滴が私の頬を叩く。

 真紘くんも異変を感じ取ったのか、足を止めて軽く空を仰いだその瞬間、突然ゲリラ豪雨が激しく降り注ぎ始めた。


「わ、どうしましょう! 走りますか!?」

「一旦雨宿り。こっち」


 慌てる私に短く応えると、彼は私の手を強く引いた。

 近くにあった軒下を目指して、土砂降りの中を二人で駆け抜ける。

 私の手首を掴む彼の熱い体温が、雨の冷たさを忘れさせるほど鮮烈に肌に伝わってきた。胸の鼓動がうるさく鳴り響く。

 屋根の下に辿り着くと、彼の手が離れ、それがひどく寂しい。


「酷いな、これ」


 降り続く雨の空を見上げながら、真紘くんがポツリと零した。

 屋根の下に逃げ込んだ私たちは、肩が触れそうなほど近くに立っている。


「私達、一緒にいるといつも雨ですね」

「雨人間コンビだから」

「なんですか、それ」


 私が少し笑うと、彼もほんの少し笑いを零していた。

 ずぶ濡れになって、買い物袋の中身も心配で、本来なら焦るべき状況なのに、私達はどこか暢気に、この想定外の足止めを楽しんでいた。


(…このまま、止まなかったら二人で長くいられるのかな)


 そんな思いが胸をかすめる。

 降りしきる激しい雨音は、この世界に私たち二人しかいないような錯覚を抱かせる。

 隣に立つ彼は、きっとこの足止めを厄介に感じているかもしれない。
 けれど私はずっとこのままでいい、とすら思っていた。

 この雨が止まなければ、私達はこの狭い軒下で、隣にずっと居られる気がしたから。

 私は、そっと真紘くんの方へ身を寄せた。

 その瞬間、雨の音にすらかき消されそうなほどの小さな声で、ぽつりと零した。


「…このままずっと、一緒にいたいです」


 それは、告白と呼ぶにはあまりに幼いけれど、私が伝えられる精一杯の言葉だった。
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