1度ならず2度までも君に恋をする
͙͘͡★



 静まり返った部屋で、作業の手を止める。

 デスクの上で震えるスマートフォンの画面に表示された名前に、一瞬呼吸を忘れた。


『森山 仁菜』


 彼女から個人的に連絡が来ることなんて、今はもう無い。

 仕事の話だと思い、迷わず画面をスライドし、そのまま耳に当てた。


「はい。佐野です」

『あ、もしもーし? 真紘くん?』


 聞こえてきたのは、想像していた彼女の声ではなかった。


「…何やってるんですか。佐久間さん」

『あれ? 気付いた? 声真似したつもりだったんだけど』


 ふざけた調子の佐久間さんの声。


「なんで森山さんのスマホから…。今、どういう状況ですか」


 問い詰める声が、自分でも驚くほど低く沈む。

 なぜ、彼女のスマートフォンを佐久間さん持っているのか。
 なぜ、こんな時間に二人でいるのか。
 今、彼女はどうしているのか。

 
『いつもの店で一緒に飲みに来たんだけど、森山が潰れちゃってさ』

「潰れたって…」

『お前が来ないなら、俺がお持ち帰りしようかなって』


 その言葉が終わるより早く、俺は椅子を蹴立てるようにして立ち上がっていた。


「何、言ってるんですか」


 自分でも制御できないほど、握った拳と声が微かに震える。

 五年前に自分が突き放しておきながら、他人の男に触れられる想像をして、こんなに取り乱すなんて馬鹿みたいなのもわかってる。

 わかっているけれど、いつも感情に制御が効かなくなる。
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