1度ならず2度までも君に恋をする
「そう言えば、佐野は現場だっけ?」


 佐久間さんの何気ない問いかけに、私は小さく頷いた。


「はい、朝からずっといないです」


 その言葉を口にした瞬間、自分でも驚くほど、胸の奥がキュッと締め付けられた。

 ついさっきまでは、顔を合わせたら恥ずかしくなるから、顔を合わせなくてよかったなんて思っていたはずなのに、姿が見えないと分かると、今度はどうしようもなく会いたいという気持ちが膨らんでくる。


(…寂しい)


 この寂しさを払拭するには仕事に戻るしかないと思い、佐久間さんに「戻りますね、ありがとうございました」とお礼を言った。


「お疲れ様」


 佐久間さんは笑顔で手を振って見送ってくれた。

 私は気持ちを切り替える様に背筋を伸ばしてストプラ局を後にする。

 クリエイティブ局のオフィスへ戻ってくると、オフィス内は聞き慣れたタイピングの音や、電話の話し声が広がっていた。

 自分のデスクに座り、まずは目の前のタスクに集中しようとモニターに向き合う。

 けれど、さっきまで佐久間さんと話していた真紘くんが迎えに来てくれたという事実が、ふとした瞬間に心の内側に入り込んでくる。


(…仕事、しなきゃ。コピー、考えなきゃ)


 思考を強制終了させるように、デスクの上の資料を勢いよく広げた。私はここで、いつどんな案件が来てもいいように備えておかなければならない。

 気持ちを強引に切り替え、手元の資料へと視線をやった。
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