1度ならず2度までも君に恋をする
 オフィスに戻るとすでに定時を過ぎており、数人の社員が「お疲れ様」と声を掛け合いながら帰路についていた。

 私も抱えてきた資料に目を通すのは明日にしようと決め、帰り支度を始めた。

 資料室から持ち出したものは、外部に漏らせない取り扱い注意の案件も多いため、私はそれらを一冊ずつ丁寧に、鍵の掛かるデスクの引き出しへと収めていった。カチッと音を立てて、鍵が閉まるのを確認すると鍵を引き抜き、自分のキーケースに鍵をしまう。

 それから、自分の机の上を見て溜息を吐いた。他の個人的に印刷したリファレンスや勉強用のコピー原稿は、完全に行き場を失っていた。結局、その資料たちはファイルに挟まれただけの状態で、机の上にまた一段と高く積み重なっていった。

 デスクの隣に本棚を購入して付けたいくらいだけれど、自分だけ大幅にスペースを取る訳にもいかない。

 整頓された引き出しの中身とは対照的に、机上はどんどんだらしなさが露呈していく気がする。

 それらしくまとめていると「森山さん」と後ろから声がかかり振り向いた。


「はい?」


 何気なく振り向いたが相手は真紘くんで、間抜けな顔をして振り向いたことが苛まれる。


「…何でそうなるの」


 何か用事があってやってきたはずの彼が、眉間に深く皺を寄せて私のデスクを見つめている。彼が指し示す先に視線をやると、一気に羞恥心が沸き上がった。


「し、しまい場所がなくて…」

「大丈夫なの? 取扱い方的に」

「はい、その辺は、もちろん…」


 語尾が小さくなっていく。最低限のルールは守っているけれど、そのルールを必死に守った結果として、目の前のデスクがこれほどまでに見苦しくなっていることが、たまらなく情けなかった。
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