1度ならず2度までも君に恋をする
「…じゃあ、サン、二、イチのカウントで背向けて」


 真紘くんが、そんな提案をしてきた。いつの間にか自分のペースに巻き込んで、さらりと主導権を握ってしまう。そんな彼の少しずるいところが相変わらずで、私は思わず笑みをこぼした。


「サン、二、イチ…」


 けれど、ゼロになっても私は一歩も動かなかった。当然、振り返ることもない。彼が怪訝そうに首を傾げて、私の顔を見ている。

 いつも彼にリードされるのも、少しだけ悔しい。だから、そんな小さな反抗心で、私はあえて彼の提案を聞かずに、じっとその場にで立ち止まっていた。


「…次、カウントした時に行かなかったら、連れて帰るから」


 一瞬、ドキッと胸が鳴った。

 冗談には聞こえない温度感。そんなことを言われたら、尚更振り返りたくなんかない。このまま残って、あなたに連れ帰って欲しい。


「…サン」


 彼の低い声が、カウントダウンをする。数字が一つ減るたびに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


「二…」


 次で、背を向けなきゃ…。

 そう思っているのに、足は地面に縫い付けられたように動かない。むしろ、このまま彼に捕まってしまいたいような、彼とまだ一緒にいられるかも、という期待値だけがどんどん上がっていく。



「イチ…」



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