1度ならず2度までも君に恋をする
 こうして、二年ぶりとなる古巣へ一時的に戻ってきた。

 おそるおそるオフィスに足を踏み入れると、佐久間さんは私を見るなりパッと顔を輝かせた


「お疲れ様です。デスクはどこを使えば?」

「そこ、一時的に伊勢のところを借りよう。マジで助かる」

「私も特に案件はまだなかったので」


 そう言いながら、整然と片付けられた伊勢さんのデスクに荷物を置く。クリエイティブ局の、個々が仕事に没頭する静けさとは違う。ここはどこか、懐かしい熱を帯びたアットホームな空気が流れていた。


「ちょうど伊勢は新しいクライアントとのやりとりが始まってて、これから本格的に始まるところだったんだ」


 久間さんがデスクに置いた資料に目を落とす。クライアントの要望が細かく記された、戦略立案のための基礎データの資料。

 今回はあくまでヘルプだから、私の役割は、伊勢さんが立てる戦略を邪魔することではなく、サポートをすること。

 競合調査、トレンド収集、既存データの整理に店舗観察。伊勢さんが戻ってきたとき、資料をスムーズに作成するための、完璧な素材を揃えておくことが今回の私の仕事だ。

 今回の案件は、衣料用洗剤のCM。資料の文字を指先でなぞりながら、内容をざっと頭に叩き込む。


「何かわからないところある?」

「いえ、これで進めます。ありがとうございます、佐久間さん」

「うん、よろしく」


 そう言って佐久間さんはデスクに戻っていった。
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