1度ならず2度までも君に恋をする
 それから私の方はトラブルも無く進んでいたけれど、問題が起きたのはむしろ『ビター・ノワール』の案件の方だった。

 撮影当日に起きたトラブルについて知ったのは、ストプラ局ヘルプ最終日となった週末の金曜日。つまり、その出来事から二日後のこと。

 たまたま夏帆ちゃんとランチをしていたら、そこに海くんも合流した。


「そういえば、水曜は大変だったよな」


 同期三人で食事をしていたら、海くんが夏帆ちゃんに話を振った。


「…その話はやめなさいよ。もう解決した話なんだし」

「佐野さんのおかげで、だろ」

「何かあったの?」


 含みのある会話に首を傾げる。

 真紘くんのおかげで解決したって、一体何があったのか。


「当日来るはずだった女優が、ドタキャンしたんだよ。なんでも現場関係者の中に、過去にトラブルを起こした人間がいたとかでさ」

「ええ?」

「それで、佐野さんが電話して呼んだ今流行りの女性モデル、香月(かづき) 真広(みひろ)さんが運良く来てくれて、撮影はどうにかなったって」

「そう、なんだ」


 女性モデルとの繋がり。

 少し暗くなった私の顔色を察したのか、夏帆ちゃんが「そこまで言わなくていいでしょ!」と海くんを軽く肘で突いた。


「でも気にならない?恋愛の事まったく興味なさそうなふりしてるのに、すんなり連絡取れて、あの香月さんが「またご飯行こうね」って声かけてたんだよ?」

「もう黙りなさいってあんた!」

「何で怒ってんの、朝比奈」


 二人の言い合いも、もう耳に入ってこない。

 彼に親しい女性の知り合いくらい、いないとは思っていないけれど、彼と親しい女性の存在を知ってしまったら、どうしても胸のざわつきを抑えることができなかった。
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