1度ならず2度までも君に恋をする
 ありがたくミルクティーのボタンを押すと、ガタン、と落ちてきたボトルを取り出し、もう一度「ありがとうございます」とお礼を伝えた。


「いいえ。こちらこそありがとう。伊勢も助かったって喜んでた」

「お役に立てて何よりです」


 温かいミルクティーを両手で大事そうに握りしめると、佐久間さんが不意に私の顔を覗き込んできた。


「…ストプラ戻ってきたくなった?」

「へ?」


 予想もしなかった角度からの質問に、思わず素っ頓狂な声が出る。私の反応がおかしかったのか、佐久間さんは笑っていた。


「浮かない顔してるから、コピーライター上手く行ってないかなあって。俺は大歓迎だよ」

「ち、違いますよ!ストプラも最高でしたが、コピーライターも楽しんでます!」

「じゃあ、プライベートな話?」


 しまった、と思った。

 完全に、その一言を引き出すための流れに乗せられていた。佐久間さんの穏やかな視線が、隠しきれていなかった私の内面を自然と読み取っていた。


「…佐久間さんに隠し事、出来ないですね」

「部下の事はよく見てるからな~」


 そんな私に向けられる眼差しが、あまりに優しかった。

 何も言えずに立ち尽くす私の頭を、佐久間さんはよしよしとでも言うように、軽くぽんぽんと撫でた。

 その後、佐久間さんはハッとした顔をして、弾かれたように手を引っ込める。


「これ、セクハラなんだった…」


 気まずそうに顔を歪め、手のやり場に困っていた。そのあまりの慌てぶりに、私は思わず吹き出してしまう。

 その頭を撫でる行為は、大学時代、佐久間さんがよくやっていた癖だった。当時の事を思い出し、じわり、と胸が温かくなる。
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