恋は手のひらの上で
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会社に戻り、エレベーターを降りたところでトートバッグを肩にかけ直す。

フロアへ向かって歩き出そうとした時に、後ろから「西野」と声が聞こえた。


振り向かなくても分かる。同期の高橋翔太(しょうた)だ。

背が高いから、立っているだけで少し視界が埋まる。
スーツの肩幅がきちんとあって、営業に混ざっても違和感がない体つき。
いつもネクタイは、少し緩い。

そして振り向くと、やはり彼のネクタイは緩かった。


「おっ。今日ヒールじゃん。珍しい」

彼はそう言いながら、私の足元を見る。
視線が遠慮なくて、少しだけむずがゆい。


「どうりでいつもより身長が高く見えるわけだ」

「おつかれ」

視線から逃げるように、早足で歩く。
彼は大股で歩いて、すぐに私に追いついてきた。

「そんな綺麗なかっこして。うまくいったの?初顔合わせ」

高橋は笑う。歯を見せて、分かりやすく。
声も大きいから、会話が丸聞こえだ。

配慮がなくて、いつもかき回される。

「うまくいったかどうかは…分かんない」

「へえー?」


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