恋は手のひらの上で
••┈┈┈┈••

オフィスの照明は、もう半分くらい落ちていた。

フロアにはほとんど人がいない。
パソコンの画面だけが静かに光っている。


「終わった……」

隣で高橋も椅子にもたれた。

「やっとだなー」

時計を見ると、もう二十二時を回っていた。

試作の調整資料と、処方変更のまとめ。
思ったより時間がかかった。


「明日、椎名さんに送るね」

「了解」

短いやりとりのあと、少しだけ沈黙が落ちる。

「じゃ、帰ろっか」

「そうだな」

二人で事務所を出る。


夜の会社は昼と全然違う。
廊下の足音が妙に響く。

エレベーターを待ちながら、私は言った。

「今日ありがとう。助かった」

「技術担当だからな」

高橋は壁にもたれている。
いつもの軽い口調。

でも、ふと視線を感じて顔を上げると、彼は私をじっと見ていた。


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