恋は手のひらの上で
私も急いで自分の名刺を差し出した。


朝比奈化粧品株式会社
商品開発課 研究員
西野 芽依(にしの めい)


「西野芽依と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。よろしくお願い致します」

この名刺の受け取り方も、手の綺麗さに見とれてしまった。
ちらりと見えた袖口の黒革ベルトの腕時計も、ギラついていなくて彼によく似合っている。

この人、どこまで自分の雰囲気を自分で意識しているんだろう。
うちの会社にはいないタイプだ、と思った。

まあ、うちは中小企業、あちらは大手なのだから、当然といえば当然かもしれないが。



こちら側は四人。

課長の朝倉さんと、営業の佐竹さん。それから、研究補佐の森下くん、そして私。
森下くんは私の後輩だけど、他の二人は会社では大先輩・上司だ。

向こう側は三人。

先ほどの椎名さんに続いて、あとから二人と名刺交換した。
サッと名刺に目を通す。

ちょっと怖そうな顔つきの重厚感ある男性が商品戦略部の部長代理、黒田さん。
マーケティング担当の若い女性は、久我さんという名前のようだ。

計七人。逃げ場はない。

普段はめったに履かないパンプスのヒールが、足元をぐらつかせる。
頑張らなきゃ、と踏ん張った。


< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop