恋は手のひらの上で
挨拶を済ませ、全員着席。

すぐに朝倉課長が口火を切った。

「本日は、共同開発をご提案させていただく保湿ジェルについてご説明いたします」

スライドが映る。
製品コードは仮称で“UV-02 Urban Shield”。

説明は私が引き継いだ。

「本製品は、乾燥肌、およびゆらぎ肌を対象とした高保湿ジェルクリームです。特徴は三点あります」

正直、緊張はしていた。

ここまで大きな案件を任されたのは初めてだ。でも、だからこそ頑張りたい。

早口にならないように気をつけながら、スライドを進める。

「第一に、ヒト型セラミド三種配合による角層バリア機能の補強。第二に、微粒子付着抑制ポリマーの採用。第三に、低刺激処方設計です」

久我さんがすかさずメモを取るのが見える。
黒田さんは眉を寄せたまま腕を組んでいる。

椎名さんが事前に渡しておいた資料をめくった。

…また、手。長い指。
ボールペンを持つ角度が整っている。


無意識に彼の手を眺めていたら、ふと椎名さんが視線を上げた。
思わず心臓が跳ねる。

「付着抑制というのは、どの試験条件下でのデータですか?」

柔らかい。でも芯がある。低いけど、心地よい声。
質問内容はだいぶキツイ。

手元の資料をばたばた探して、ようやく答えを見つける。

「JIS規格に準拠した微粒子模擬試験を実施しています。PM2.5相当粒子での付着率を、対照比で約32%低減しています」

営業の佐竹さんもうなずく。
よかった。間違っていない。


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