恋は手のひらの上で
「芽依。もう、“好き”でしょ?」

紗英がさらっと聞いてきたものだから、私は思わず声を上げる。

「えっ…いや、違う違う!待って!早い!好きになるには早い!」

心臓が少し早くなるのを感じる。
動揺がしっかりグラスの中のワインが激しく揺れて丸見えになってしまった。

紗英は追い打ちをかけるように目を細める。

「なに言ってんの?恋愛に早いも遅いもないよ。そんなの恋愛オンチが言うセリフだからね?」

「恋愛オンチ…」

自覚がないところに切り込まれて、グサッと胸に突き刺さる。

「でもさ、それよりも、椎名さんってすでに彼女いるんじゃないの?」

試すような視線で私を見据えて、麻耶がからかうように腕を組んだ。

「モテるでしょ、あれは。普通に」


一瞬、胸がヒリッとする。
その可能性があることを、すっかり忘れていた。

「芽依、今ショック受けたよね?」

ほんの微かな感情の機微を、紗英は見逃さない。
私に詰め寄るようにテーブル越しに睨みをきかせる。

…ここって、バルだよね?
取調室じゃないよね?

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