恋は手のひらの上で
「二人とも…やめてよ」

思わず上ずった声が出る。

照れている自覚もあるけど、心の奥は複雑だ。
あの時の私の、ズレた感覚が浮き彫りにされているみたいで。


「芽依、手だけじゃないのよ、男は」

紗英が憤然とした態度で続ける。

「どうなのよ、知らない間に彼に心を奪われる女がそのうち多数現れたら」

気圧されてしまい、返す言葉が思い浮かばない。
この反応に、二人は揃って呆れ顔。

「これだから手フェチは…。手さえ良けりゃ顔はどうでもいいわけ?」

麻耶の視線がやけに鋭く突いてくる。


…ああ、あの時は、初めて会った日は、確かに手ばかりに気を取られていたかも。


初めて会った日、名刺交換のとき、あの指先に視線が吸い寄せられていたのは事実。
けど、今日は自然に笑ってくれた椎名さんの顔も、思った以上に印象に残っている。


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