俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 とはいえ、誠治もひとりだからひとのことは言えないのだが。

 誠治は、アイスコーヒーに口をつけ、自分から口を開いた。「どこ出身?」

「い、しかわ、です……」まだ、目を合わせられない。警戒心の強い彼女は俯くとストローに触れ、「あんま喋ると方言出るんで、恥、ずかしい、んです……」

「別にぼくは、方言は気にしないよ」誠治は、意識的に笑いかけた。彼女が直視することはないと分かっていても。「きみの思うとおりに、話せばいいんだよ」

 関西出身の人間は、方言を消し去るどころかむしろ誇りに思う傾向すらあるのに、以外の地方出身者が恥じるのは何故だろう。

 内心疑問を感じながらも、誠治がにこやかにそう語りかけてみると、彼女は、「ほんでも。ほしたら、わたしがなに言っとるか伝わらんと違いますか」と焦ったように言う。

 東北や甲信越の出身者は、確かに訛りがものすごいが、北陸の人間はさほどでもないと誠治は記憶している。別に。同じ日本語なのだから、会話が成立しないはずがない。

「大丈夫だよ」と誠治は彼女の背中を押す。「いまくらいのだったら、ぜんぜん聞き取れる」
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