俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「そう、……ですか」はーっ、と彼女が胸を撫で下ろす。どうやら、その胸のうちは不安でいっぱいのようだ。

 よく見れば、華奢な割りにはバストにボリュームのあるほうで……。

 誠治は慌てて視線を外す。そして、「あのさあ」と口を開く。

「お札から出すからああなるんだよ。先ずね、小銭をいくら持っているかを確認して、ある場合は、小銭から先に出すの」

 あ、と彼女の口が開く。

 彼女のうす茶色い瞳を見つめ返し、誠治は、ゆっくりと、自分の意志を伝える。

「それから、……店員は、別にきみをいじめるために接客するわけじゃない。ちょっと、こころを落ち着けて、小銭から出せば、ちゃんと出し終えるまで待ってくれるし、きちんと対応する。むしろそうするのが彼らの職務だ」

「わ、たし……」彼女は頭をかく。なんだか、泣きそうな顔をしている。迷子になった子どもが親を見つけたときに、こんな顔をするのかもしれない。「向こうやと、お金なんかあんないっそいで支払わんし、後ろに行列なんかできんし、……ほんで、ひと待たせとるって思ったら、えっらい焦ってしもて……」
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