俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「ふーん」コーヒーに口をつけ、ふと思いついたことを誠治は言ってみる。「じゃあ、ぼくと一緒にバイトしてみる?」

「えっ」ぱっ、と喜びの感情が彼女の顔に走るのを誠治は見た。だが瞬時に彼女はそれを押さえ込み、「でも、……いいです」と首を振る。

 ちょっと失望しつつ誠治は尋ねる。「どうして?」

「だって、……一条先輩。いろいろとわたしによくしてくれとるし。いまのバイトの話やって、わたしに合わせて、本当はやりたくないがに、してくれとるんかなあって思ったら、なんか、暗くなってしもて……」

 信用がないなあ。

 誠治は、内心でため息を吐く。

「ぼくは、自分のしたくないことは、しない主義だ」そうは言うものの。それは彼の『真実』ではないことに、彼自身気づいていた。「アルバイトは、実を言うとぼくは、したことがないんだ。二十歳間近になってさすがにそれはどうかと思ってね。社会勉強したいんだ。きみとのことを、きっかけに」

 なにやら含みのある言葉が出てしまったが。

 どうやら彼女はそれには気づかず。「一条先輩がいいんやったら、いいんですけど……」と、ストローをすする。
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