俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 学食にて彼女と待ち合わせていた彼は、本を読んでいた。言説(ディスクール)という、この世の出来事のすべては『語り』によって成り立っており、要するに人間は己の主観でしか物事を見ることができないという、なかなかに刺激的な書籍だった。

 ひとの気配を感じ、誠治は顔をあげた。

 学食は多くの学生が訪れる場所だ。通常、誰か通りがかった程度で注意を引かれたりなどしない。

 しかし、そのときはなにかが違った。

 先ず、伸びやかな素足が目に入る。

 膝丈の真っ白なスカート。いや、ワンピース。おそらく、ノースリーブ。

 その白さが――初めて見る彼女の素足が、誠治の目に眩しかった。

 淡いイエローのカーディガンを、前開きにて羽織っている。

 髪は、顎の下で切り揃えられている。三十センチ以上はカットしただろうか。髪を、片方の耳にかけて。品のよいアナウンサーみたいだ。

 化粧も、濃すぎない、素肌の綺麗さを際立たせるナチュラルメイク。桃色のチークもきちんとほどこしており、明るいピンクの唇がとても健康的だ。アイシャドウが淡いグリーンで、初夏を控えたこの季節にふさわしい、素敵な色合いだった。
< 116 / 259 >

この作品をシェア

pagetop