俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
ものの数秒で誠治は看破した。
――こいつも、松岡綾乃に惚れている。
「あっ、せっかくだから先輩にけいちゃんのこと紹介します」火花を散らす男たちの攻防を知らず、彼女が後ろの彼を手で指す。「小池丈一郎くんです。わたしは、けいちゃんって呼んでますっ」
「……ちなみに、なんで『けいちゃん』なわけ」小池丈一郎は、見た目通りクールな声の持ち主だ。「おれ、確かに、『ほかのひとと被んないあだ名つけてくれ』って言ったけどよぉ……」
「んー」うえを向いて彼女は考える。大きな目の、白目が大きくなる。「なんか、一度でも、男の子をちゃんづけで呼んでみたかったんだよねー。その憧れが叶えられて満足っつうかー。えへへ」
「……答えになってねーけど。行くぞ。綾乃」
「あっ、待って。一条先輩、じゃ、またあとでねっ」
「……うん」手持ち無沙汰に手を挙げ、そしてハンバーグ定食に戻る。
誠治は、自分のなかに去来する感情を直視する。
――嫉妬。
おれは、あの子を『松岡さん』と呼んでいる。
あの子は、あいつを『けいちゃん』と呼んでいる。憧れが叶えられて満足とまで言っていた……。