俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 人間は、主観でしか物事を見ることができない。

 その考えは、いつしか、誠治の礎となった。

 散々、おれのことを貰われっ子だと馬鹿にした連中。あいつらは、『血のつながり』こそが人間を決めると思い込んでいる。そんな連中といくら話し合ったって、無駄だ。

 誠治の通う私立H大学は、付属の高校から進学した人間が約半数。残りは、難関をくぐり抜けた外部の人間だ。なお、小池丈一郎は高校からの編入者で、松岡綾乃は、言わずもがな、外部の人間。この大学に憧れ、地方からやってくる人間は多い。

 大学に入って初めて、誠治は金持ち以外の人間と話す機会を与えられた。苦学生も珍しくはなかった。奨学金を貰う学生も多くいた。ここで初めて自分と価値観の似た人間に出会えるのでは、という期待を抱いた。

 彼の敬愛する滝沢教授の講義で、ひとりで座っているのをよく見かける同じ一年生の男が気になり、思い切って話しかけてみた。

「うん。そう。おれ、滝沢教授ってすげえなあってずっと思ってて――先生の書いた本、全部読みたいって思ってるくらいなんだ」

 思いのほか、フランクな人間だった。
< 126 / 259 >

この作品をシェア

pagetop