俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 ひとりで座るのは、別に友達がいないからというわけではなく、ひとりで集中して受講したいからだそうだ。

 群れたがらないその姿を、かっこいいと誠治は思った。周りから爪弾きにされるのではなく、自ら単独行動を選ぶその姿が。

 彼とは、授業を離れて、熱く議論を交わすこともあった。誠治にとって、初めてできた親友だった。

 誠治は、サークルには入らなかったが、留学生をサポートするチューターに登録したり、学園祭の実行委員の仕事などをしたりと、意図的に自分を忙しくした。ひとの集まる場では、高校時代からの顔見知りも見かけたが、知らない人間に話しかけられることも多く、次第に、気にならなくなってきた。『一条誠治』の役回りを期待する人間の目をだ。

 それでも、彼と周りを隔てる透明な膜を取っ払うところまでは行き着かなかった。

 たまに彼が、わざと期待を裏切る行動を取ってみると、決まって彼らは言うのだ。

『一条さんだったら、なんとかしてくれると思ったのに……』

 おれを誰だと思っている。

 一条の、本当の子どもではないんだぞ。両親の顔を知ってはいるが、ただの根無し草だ。
< 127 / 259 >

この作品をシェア

pagetop