俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 誠治は、半ばやけっぱちで彼女に語りかける。

 ところがだ。

「ふーん。そうなんですかあ」

 明るい調子の声に誠治は拍子抜けをする。

 恐る恐る顔を起こせば。『おはよう』と言われたときとまるで変わらない表情に迎えられる。

 誠治は、彼女に挨拶をしたわけではない。

 ひとが、二十年来胸に抱え続けてきた、深刻な秘密を打ち明けているというのに……。

「……えっと。あのですね」彼女が、誠治の顔色を見て、補足を加える。「わたし、アメリカにペンパルがいますし、高校の頃に短期留学をしたこともあるんですけど。向こうじゃ、養子って別に珍しいことじゃないんですよ。日本とは違うんですね。adoptedって言われてなんのことか分からないで辞書一生懸命引いたんですけど……」そのとき、よっぽど慌てたのか。思い返すように彼女の口元がアーチを描く。「アメリカってキリスト教が根付いてるからですかね。誰かのためになにかを行うのを誇りに思うカルチャーがありますよね。
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