俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~

■5

 誠治は、彼女が去ったあとのテーブルをただ見つめていた。

 控えめにウェイターが訊いてくる。「……お食事は、どうなさいますか」

「いいよ。そのまま二人分運んで」

「かしこまりました」怪訝なウェイターの表情を無視し、ワインに口をつける。

 黙々と、パートナー不在のテーブルにて提供される料理を、誠治は食した。そのあいだじゅう、彼はずっと、松岡綾乃との思い出に耽り、彼女が幸せになることだけを願っていた。

 あの声が笑顔が、不意に誠治のなかに蘇る。


『すごく優しいでしょう、わたしに』


 自分は、それでも、松岡綾乃を愛していた。


 あふれるものをこらえ、誠治は冷静を装い、最後のデザートまでを平らげた。


 * * *


 初対面の感想。

『アニメ映画に出てくる中国人みたいに細い目の持ち主だな』。

 思うに、No body is perfect. 『PERFECT HUMAN』なる曲が世間を賑わせて久しいが、あれは、誰しも欠点を有するという現実をネタにしているのだと思う。

 何故なら、佐藤あやめは最愛の女とは言いがたいが、性は完璧で。

 他方、松岡綾乃のからだは完璧なのに相性はいいとは到底言いがたかった。
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