俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 誠治はもう、どうでもいいという心境だった。結婚式も行われるという、都内でも有数の宴会施設にて初めてその女と会った。因みに。女とはもっと前に会う約束だったが、誠治が無理を言い、延期させた。それで婚約解消されるならそれでもいいとやけっぱちの行動だったのだが先方は快く了承してくれた。一条家の執事に聞いたところ、誠治の父は、息子が結婚前に社会人として万全の状態にのぼりつめていきたいと説明したそうだ。

 馬鹿馬鹿しい、と誠治は思う。

 女は、晴れがましい着物を着ている。特徴のない女。出会って抱いたとしても数年後には忘れていそうな顔。まあ、着物が似合う和風な顔の女とみなす程度。松岡綾乃ほどには、ドレスは着こなせないだろう。

 着てもらうドレスは、イエロー以外にしよう。と、誠治がこころのなかで決めたとき、

「それでは、あとは若い二人だけでゆっくりと」お決まりの台詞を残し、両親と彼女の両親は帰っていった。

 彼女は、黙って誠治を見つめている。それにしても細い目だ。綾乃やあやめのバタ臭い顔が彼は懐かしくなった。

「庭でも、散歩しませんか。せっかくいい眺めですし……」
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